InDesign(インデザイン)出力のカラー設定
色分解設定の違い
カラー印刷用のデータをイメージセッタやCTPで出力する場合、インクの版ごとに分版出力する必要があります。分版出力するには、CMYKの各チャンネルごとにデータを分け、それぞれ別に出力することになります。
この作業はDTPソフトであれば出力時にアプリケーション側で行うことができますが、最近のRIPはRIP内で分版して出力することも可能になっており、今やこちらのほうが主流です。その場合は、ソフトのほうではカラーデータをそのままPostScriptデータにしてRIPに送り、RIPでCMYKの4版に分けて出力します。
InDesignでカラー出力する場合、出力設定の「色分解」というセクションで「カラー」欄に何を選ぶかによって、処理の方法が変わってきます。この欄には設定として「コンポジットの変更なし」「コンポジットグレー」「コンポジットRGB」「コンポジットCMYK」「色分解(InDesign)」「色分解(In-RIP)」の項目があります。
「コンポジットグレー」や「コンポジットRGB」はこの場合関係ないから措くとして、残りの4つの設定のうち、「色分解(InDesign)」を選ぶと、InDesignが分版処理をしてRIPにデータを渡し、それ以外の3つだとInDesignでは色分解されていないPostScriptデータが作られることになります。
では、色分解されていないPSデータを作るという点では同じなのに、どうして設定が3つもあるのでしょうか。「色分解」は分解出力が必要なイメージセッタやCTPで、コンポジットCMYKはCMYKデータを出力するPostScriptカラープリンタで使うといった“用途”が違うのはもちろんですが、それだけではなく、InDesign上での処理方法や実際に作られるデータ自体にも違いがあるのです。
「コンポジットの変更なし」と他の2つの違いとしては、まずカラーマネージメント処理の有無が挙げられます。InDesignでは、カラー出力は基本的にカラーマネージメント処理を行うことになっていますが、「コンポジットの変更なし」を選ぶとカラーマネジメントのセクションでカラーマネージメント処理を行わないオプション「カラーマネジメントなし」を選べるようになります。
もっとも、他の設定でも「PostScriptプリンタでカラーを決定」(InDesignでは何も処理せず出力機のRIPでカラーマネージメント処理を行う設定)を使い、出力機側でカラーマネージメントを行わないようにすれば処理は行われないので、それほど大きな違いではないかもしれません。
それよりも重要なのは、設定によってオブジェクトのカラーの指定が違ってくることがあるという点でしょう。
通常、InDesign上でCMYKの色が指定されているオブジェクトは、PostScriptデータでもCMYKの数値で色が指定されることになります。この場合のCMYKはDeviceCMYKと呼ばれるものでCMYKの各チャンネルの数値を順番に記述して表します。
一方、InDesignでオブジェクトの色に黒のスウォッチを使ってスミベタを指定した(環境設定で「黒スウォッチを100%でオーバープリント」になっている場合)場合やオーバープリントが指定されている場合は、DeviceCMYKではなく、SeparationカラーやDeviceNのブラックで指定されることになります。
Separationというカラーは単色の指定で使うもので、数値も1つのチャンネル分しか記述しません。DeviceNは使うチャンネルをユーザーが指定できる色であり、ブラックだけを指定することもできます。
また、掛け合わせの色にオーバープリントが指定された場合も、SeparationやDeviceNを使って色が表現されます。
設定によって変わる色
ここまではいいのですが、問題は透明効果が使われている場合です。
同じページ内に透明効果が使われていた場合、オーバープリントが指定された色は、色分解のカラー欄の指定によってデータが違ってきます。「コンポジットCMYK」「色分解(In-RIP)」が指定されている場合、黒スウォッチ100%はSeparationのブラック100%になりますが、「コンポジットの変更なし」が指定されている場合は、CMYKの4つのチャンネルが指定されたDeviceN(C,M,Y,K=0,0,0,100)が使われるのです。
同様に、掛け合わせでオーバープリントが指定された色は、「コンポジットCMYK」や「色分解(In-RIP)」では使われているチャンネルだけがひとつにまとめられたDeviceNになりますが、「コンポジットの変更なし」だとCMYKすべてが指定されたDeviceNになってしまいます。
他の記事(PDFのポイント 「PDFのオーバープリントに注意」)でも解説しているように、アドビ純正RIPの基本的な仕様ではDeviceCMYKは基本的にオーバープリントにならないデータであり、各RIPで独自に追加されているオーバープリント処理の機能を使うか、透過されるチャンネルが記述されていないSeparationやDeviceNを使う(記述されないチャンネルはオーバープリントされる)ことが必要です。PDFではDeviceCMYKでオーバープリント指定できるOPMという設定も使えますが、CMYKの各チャンネルが記述されたDeviceNはそのいずれにも該当しないため、オーバープリントされないことになってしまうのです。
なお、「コンポジットCMYK」と「色分解(In-RIP)」でも違いはあります。Illustratorで白のオブジェクトにオーバープリントを指定してAIファイルに保存し、InDesign CS2に貼り込んで出力した場合、「コンポジットCMYK」はオーバープリント指定が効いたDeviceCMYKになり、「色分解(In-RIP)」だと白オブジェクトが削除されます。ちなみにEPSを貼り込んだ場合はどちらの設定でもSeparationの「None」(なし)となり、白は見えなくなります(CS3だとAIでも同様になる)。
実際の出力ではRIPによって条件が変わり、必ずしもこのような結果にならないかもしれませんが、色分解の設定次第でオーバープリントになるかならないか変わる可能性があるということは覚えておいたほうがいいかもしれません。
(田村 2009.3.16初出)
(田村 2016.6.3更新)