InDesign(インデザイン)の文字環境
InDesignの登場によってDTPの文字環境は大きく変化しました。20,000字以上の文字種をもち、豊富な異体字や組版機能が使えるOpenTypeフォントをフルに活用できるようになったことで、外字の必要性が減り、これまでのようなフォント管理の煩わしさも軽減しました。
ただし、InDesignも完璧なソフトではなく、注意しなければならない点も少なくありません。今回はInDesignの文字環境について見ていきます。
ユニコード入力への対応
InDesignの大きな特徴としてユニコードのサポートが挙げられます。MS-Wordなど、もっと早くからユニコードに対応していたソフトもありましたが、メジャーなDTPソフトではInDesignが最初でした。
OpenTypeフォントの豊富な文字種を使いこなすためにはユニコードへの対応が欠かせないだけに、ユニコード対応はInDesignの生命線と言っても過言ではありません。
ただし、ユニコードに対応したといっても、当初は内部的に対応しただけに過ぎず、2.0までの入力インターフェイスはユニコードに完全対応してはいませんでした。ファイルの読み込みは可能ですが、InDesign上で文字を入力する場合はあくまでも従来通りシフトJISだったのです。
また、ユニコード文字のペーストはサポートされていましたが、ユニコードの中でもサロゲートペアで記述される文字については対応していませんでした。
CSになって、入力インターフェイスがユニコードに完全対応し、字形パレットからだけでなく、文字パレットなど入力システムから直接入力することが可能になりました。サロゲートペアにも対応したため、ユニコードにある文字であれば入力に支障はなくなったと言ってよいでしょう。
検索・置換機能の文字コントロール
DTPの文字処理は、入力さえできればいいというわけではありません。修正の場合、検索・置換機能も重要な要素です。InDesignには強力な検索・置換機能が備わっており、単なる文字の検索・置換だけでなく、スタイルなど属性を利用した検索・置換も可能です。
なかでもCS3から搭載された字形の検索・置換機能を使えば、OpenTypeのあらゆる文字を検索・置換することができます。
字形の検索・置換では、フォント、スタイル、ユニコード番号、CID番号、さらに字形パレットで選んだ文字を検索・置換することができます。たとえばシフトJISで入力できない文字を適当な記号で入力しておき、ユニコード番号を使って一気に置換するといったことが可能です。
なお、異体字の場合、ユニコードの番号は同じであることも多いでしょう。その場合はそれぞれのCID番号を調べて検索置換します。
ちなみに、通常のテキスト検索・置換でも、ユニコードの番号を< >で囲んで指定することができます。たとえば、「禍」という文字をすべて“しめす偏”の異体字(ユニコード番号FA52)に置換したいのであれば、検索文字列欄に「禍」、置換文字列欄に「<FA52>」を入れればいいわけです。
InDesignタグの利用
ユニコードで識別できない文字をテキストレベルで管理する方法として、InDesignタグを利用するやり方があります。InDesignからテキストをInDesignタグ付きテキストで書き出すと、ユニコードにない文字には<cSpecialGlyph:15437>といったタグが、また、異体字には<cOTFeatureList:aalt\,4><FE41>といったタグがつきます。
「cSpecialGlyph:○○」というのはCIDのグリフ番号です。また、「FE41」は先ほど見たようにユニコード番号、「aalt\,4」というのはOpenTypeフォントで異体字属性を表すタグです。InDesignでは、異体字はこういった異体字タグの数値で管理されているのです。
ユニコードで扱えない文字を一括で置き換えたい場合、いったんInDesignタグテキストに書き出し、テキスト上で異体字タグやグリフ番号を付加ないし置換し、ふたたびInDesignに読み込むことで、一括置換と同様の処理を行うことができます。
もちろん、処理が複雑になる以上、トラブルが起きる危険性も高くなるので、処理後の校正チェックはきちんとするべきでしょう。
(田村 2006.3.27初)
(田村 2016.6.3更新)