画像のシャープネス処理
眠い画像は輪郭を強調
写真を撮影して、いい画が撮れたと思っていたのに、後で見たらピントがいまいち甘かった…なんてことはよくあります。いわゆる“ジャスピン”だったと思っても、印刷物にしたらなんだか写真が眠い感じになってしまったということもあるでしょう。
網点を使って画像を再現する印刷では、たとえジャスピンの写真であっても、そのままだと眠い画像になってしまいます。そのため、印刷で写真を扱う場合は、ピントの甘さをカバーし、よりシャープな画になるような処理を施さなければなりません。
写真が眠いかシャープかは、絵柄の輪郭部分に左右されます。輪郭がくっきりとしていればシャープに見え、ぼんやりとしていれば眠く見えるのです。要するに、絵柄の輪郭部分だけをくっきりさせることができれば、眠さは解消できるわけです。
まずは階調と色調を整える
絵柄の輪郭だけをくっきりさせるにはどうすればいいのでしょうか。まず、写真の補正の基本である色補正について考えてみましょう。
色補正は、一見シャープさと関係ないように思われるかもしれません。しかし、輪郭をくっきりさせるということは、具体的に言えば輪郭部分の明度差および色相差を大きくすることに他ならないのです。
眠い画像をPhotoshopで確認してみると、色かぶりして色相差がなかったり、濃度が偏っていて明度差が小さく、メリハリがないデータであることが多いものです。そういった場合、Photoshopのレベル補正やトーンカーブなどの機能を使って階調や色調を適正にするだけで、ある程度メリハリのあるシャープな画にすることができます。
アンシャープマスクの仕組み
デジタル画像をシャープにするPhotoshopの機能として最も有名なのは「アンシャープマスク」でしょう。アンシャープマスクは、元々フィルムを使ったアナログのレタッチ処理に由来する機能です。
シャープにするのに“アンシャープ“(シャープでない)マスクと言うのはおかしいと思ったことはありませんか。これは、文字通りぼけた写真をマスクに使う処理を意味しているのです。
まず、原稿の写真からピントをぼかした版を作ります。ぼかすということは、輪郭部分の明度差を小さくするということであり、明度差が本来大きい部分(つまり輪郭)ほど、元原稿とぼかした版の差が大きくなります。これを利用してマスク処理することで、輪郭だけを強調することができるのです。
具体的には、輪郭の明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くなります。これによって明度のコントラストが大きくなり、シャープさが出るわけです。
この処理をデジタル画像に適用したのがPhotoshopのアンシャープマスク機能です。この機能では、「量」「半径」「しきい値」の数値で処理をコントロールします。
「量」は処理による色調の増減(明るいピクセルはより明るく、暗いピクセルはより暗く)の割合で、値が大きいほどシャープになります。
「しきい値」は、どれくらいの色調差がある時に処理を行うかを指定するものです。色調は256階調なので、たとえば「25」にすれば10%以上の色調差があるピクセル同士に対して処理を行うことになるわけです。
「半径」は、適用するピクセルの範囲を指定します。値が小さいと隣り合うピクセルの色調差が大きい場合だけ、処理が行われます。値が大きくなると、離れたピクセル同士の色調差も計算に入り、処理が行われます。半径が大きいほど効果も大きくなります。
それぞれの数値をどれくらいにすればいいかは、画像によって異なるので一概には言えません。ただし、デジタルカメラの画像はフィルム以上にシャープネス処理が必要です。画面でちょっと掛けすぎに見えても、印刷ではそれほど効かないものです。
なお、シャープネス処理は、色補正が済み、解像度や縮尺が確定した段階で行います(そうでないと「半径」を指定する意味がない)が、問題なのが作業するカラースペースです。
RGBやCMYKモードでアンシャープマスクを掛けると、RGBやCMYKの値で明るさを調整することになり、絵柄によっては彩度や色味が変わってしまうこともあるでしょう。色味は変えずに明度だけを調整するためには、いったんLabモードに変換し、Lチャンネルだけにアンシャープマスクをかけるという方法があります。この際、aチャンネルとbチャンネルには逆にぼかし処理をしておくと、シャープネスによる色の目立ちが抑えられます。
スマートシャープ機能
Photoshop CS2には、新たに「スマートシャープ」という機能が追加されています。この機能では、シャープネス処理のアルゴリズムが複数選択できるようになり、さらにシャドウ部分とハイライト部分の処理を個別にコントロールできるようになりました。
この機能を使うことで、より効果的なシャープネス処理が可能になるはずです。ただし、シャープネス処理のポイントは結局画像を見る目。画像を見て、どれくらいの処理が適当かを見極めることが何より大切なのです。その意味では、地味ながら経験が求められる作業と言えるでしょう。
(田村 2006.7.18初出)
(田村 2016.5.25更新)