半調の処理
背景画像を目立たなくする
表紙やとびらページなどでは、画像の上に文字を乗せるレイアウトがよく見られます。こういった場合、画像の絵柄によっては文字が読みづらくなってしまうこともあります。そういったケースでは、文字の配置位置の変更を検討するか、あるいは画像や文字に特殊な処理を施すことで文字の可読性を確保することが必要になってきます。
文字に対する処理ということでは、白フチや色フチが代表的な手法です。文字の輪郭線を白く抜いたり、色をつけることで、バックの画像と区別させるわけです。ただし、この方法はタイトルなどの文字では非常に効果的ですが、サイズが小さかったり長めの文章だったりするとうるさくなりすぎるということもあります。
一方、画像に対する処理として一般的なのが「半調」(はんちょう)という手法です。半調とは、文字通り画像の調子(階調)の変化を下げることで上に乗せた文字を読みやすくするというものです。具体的には、文字の下にある画像を飛び気味に白っぽくします。これだけで、上に乗った文字(普通はスミベタ)はかなり見やすくなるものです。
なお、半調処理を行うといっても、画像全体に施すのではなく、文字が置かれるエリアだけを処理するというのが普通です。これによって、画像は画像として文字は文字としてそれぞれきちんと見せながら、画像と文字の配置を自由にレイアウトできるわけです。
以前の印刷では、半調の処理は製版オペレーターが行う専門的な作業でした。そのため、文字の位置をちょっと変更するだけでも作業のやり直しになり、面倒でしたが、DTPではソフトを使うことで誰でも簡単に半調の作業が行えるようになりました。
半調処理の基本
半調処理を行うには、画像の階調をコントロールしなければなりません。まず、Photoshopで処理を行う方法を見てみましょう。
Photoshopには階調をコントロールする方法がいくつかありますが、一般的には「トーンカーブ」か「レベル補正」機能を使います。トーンカーブやレベル補正は入力(元の値)と出力(補正後の値)を調整することで処理を行いますが、シャドウ側の出力をハイライト側に移動させることで色の濃い部分が薄く、つまり白っぽくなります。どの程度白っぽくするかは絵柄によっても違ってくるはずですから、実際のケースではプレビューで確認しながら作業するとよいでしょう。
処理を行った画像は別名で保存しますが、処理していない画像もあとで必要なので取っておきます。
次にレイアウトソフトで半調処理をしていない画像を貼り付け、さらにその上にぴったり重なるように(完全に同じ位置でないとならず、もちろん縮小率が違うのもダメ)半調処理した画像を貼り付けます。続いて上の画像の画像ボックスを操作して、半調にするエリアのサイズにします。
ここで重要なのは、上の半調画像の位置は一切変えずにボックスのサイズだけを変えるということです。これによって、あたかも特定のエリアだけが半調処理されたように見せることができます。
最後に半調のエリアの上に文字を乗せれば作業は完了です。
以上の方法は、画像のボックス(フレーム)という概念を持つDTPソフトであればどれでも使うことができます。なお、画像ボックスが使えないソフトでも、画像のマスク処理が可能であれば同じような効果が得られます。
透明効果を使った半調処理
上記の方法は、機能的には単純でリスクも少ないのですが、画像を2枚使うためファイルがそれだけ重くなり、管理も面倒になるといった欠点もあります。それに対して、InDesignなどでは透明効果を使うことでもっと簡単に半調を実現することが可能です。ここではInDesignでの作業について見てみましょう。
透明効果を使う場合、画像は特別な処理を必要としません。そのまま貼り付けるだけで十分です。続いて、画像の上に白いオブジェクトを置き、半調のエリアになるようサイズ、位置を調整します。
次に、白のオブジェクトを選択し、「透明」パレット(パネル)で不透明度を適当な値に調整します。透明効果によって、白を透かして下の画像が見える形になり、結果として画像が白っぽく、階調の変化が少なくなった状態になるわけです。
白のオブジェクトは、四角だけでなく円や角丸四角形などInDesignで描ける形であればどんな形にもできますし、境界をぼかしたり複合パスを作成することも可能です。
この方法のメリットとしては、画像がひとつだけで済むため管理がラク、しかも2つの画像をピッタリ重ねて貼り込むといったことも不要なため、レイアウトの移動も簡単、さらに半調部分のサイズ、位置、濃度などの変更も極めて簡単といったことが挙げられます。
要するに良いことづくめなわけですが、透明効果を使うため、後の出力ということも考えておく必要はあるかもしれません。もっとも、コントラストを下げる処理をするということは画質が目立たなくなるということですし、出力時に透明の分割・統合処理を高解像度にしておけば、ほとんどの場合は問題にはならないはずです。
半調は画像を使ったレイアウトの基本的な処理のひとつであり、よく使われるものであるだけに、きちんと理解しておくことが大切でしょう。
(田村 2009.5.25初出)
(田村 2016.5.31更新)