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あらためて考えるPDF/Xの出力 |
PDF/Xの問題
最近は出力用の入稿データにPDFを使うことが増えてきました。
従来のアプリケーションデータを使った入稿と比べて、リンク画像の添付忘れやフォントの不一致などがないPDF入稿は、単純なミスによる出力トラブルを防ぐ点では大きなメリットがあります。
ただし、PDFを使えばどんな場合でも出力がトラブルなしにうまくいくわけではありません。現状で、PDF入稿でトラブルになるケースは意外に少なくないのです。
たとえば、解像度の問題があります。現在、PDF入稿で一般的に使われているフォーマットはPDF/X-1aです。印刷用データの標準フォーマットとして策定され、印刷トラブルが起きないようにさまざまな制限が付加されたPDF/X-1aですが、このフォーマットには解像度の制限がありません。つまり、使われている画像が1000ppiでも100ppiでもPDF/X-1aとしては正しいデータなのです。
画像に必要な解像度は仕事によって変わってきます。日本の通常のカラー印刷では画像解像度は350ppiが一般的ですが、300ppiや250ppiではダメかというとそうとは限りません。どうしても250ppiしかない画像を使わざるを得ない場合もありますし、外国向けの印刷物だと300ppi以下の画像が標準ということもあります。パソコンの画面キャプチャだと、100ppi程度でも問題になりませんし、逆に、高精細印刷では400ppiや500ppi以上が必要になるケースもあるでしょう。
そのため、PDF/X-1aでも解像度に関する制約は定められなかったわけです。そうなると、PDF/X-1aだから大丈夫というわけにはいかず、画像の解像度が適切かどうか、入稿されたデータを出力前にいちいちチェックしなければ安全性を確認できないことになります。とは言え、その画像データを作成した人間(カメラマンやレタッチ作業者)やレイアウトソフトに貼り込んだオペレーターなど、元の画像を扱った人間でなければ、画像が適切な解像度であるかどうかをチェックするのは困難です。
また、フォントの問題も依然としてあります。PDF/Xではフォントは全て埋め込むことになっており、埋め込まれた文字は全てそのまま出力されるはずです。しかし、実際にはエンコーディングのトラブルなどによって文字が化けるというケースも皆無というわけではないのです。
さらにもうひとつ問題なのが、透明効果をめぐるトラブルです。重なったオブジェクトに透かした効果を与える透明効果は、ドロップシャドウなど透明効果と気付かずに使うことも多く、トラブルが少なくない機能です。現在、トラブルを防ぐために、Adobe製品では透明効果に対して、分割・統合処理を施し、通常のオブジェクトに変換してから出力するようになっています。
透明効果という概念がないPostScriptはもちろん、PDF/X-1aやPDF/X-3でも透明効果は許可しておらず、DistillerやInDesign(インデザイン)でPDF/Xを書き出す際には、やはり透明効果は分割・統合されます。ただし、Distillerは、すでに透明効果が分割済みのPostScriptを使ってPDFに変換するため、Distillerには透明効果を処理する機能はありません。
分割・統合処理では、透明効果の見た目(透け具合)をできるだけ忠実に再現するのが理想です。350ppi程度の解像度である画像データと、解像度を持たず2400dpiなどの最終的な出力解像度に依存する文字や線などのベクターデータが重なっている場合、厳密に再現するには出力解像度に合わせて分割・統合処理しなければなりません。しかしこれではデータが重くなりすぎるので、300〜400ppi程度の解像度で処理を行うのが普通です。
つまり、本来は2400dpiの解像度で処理されるはずの文字が400dpiで処理されるわけで、これによって文字が太るなどの現象が生じてしまうのです。もちろん、通常であれば見た目でそれほど大きな違いにはならないでしょうが、若干でも品質に影響があるのは事実です。
PDF/X-4とAdobe PDF Print Engine
PDFにおける透明効果の問題を解決する技術として昨年大きな注目を集めたのが、PDF/Xの新しいバージョンであるPDF/X-4と、PDF出力ソフト「Adobe PDF Print Engine」です。
PDF/X-4は、従来印刷用PDFで使われてきた1aや3と違い、透明効果をサポートします。つまり、PostScriptやPDFを生成する際に透明効果を分割・統合することなしに、透明効果をそのまま保持したPDF/Xなのです。
そもそもPDF/Xで透明効果が排除されていたのは、RIPが透明効果を含むデータを出力できないためでした。RIPの中には透明効果も出力できるものがありましたが、これも実際には内部でPostScriptに変換して分割・統合処理を行うという工程を経ていたため、アプリケーション側で分割・統合されたPDFと同じような問題を抱えていたのです。
PDF/X-4では、透明効果がそのまま保持されますが、これを出力するには新しい出力のシステムが必要になります。それがAdobe PDF Print Engineです。Adobe PDF Print Engineは、透明効果が含まれたPDFを最終段階までそのまま維持します。従来であれば、出力解像度に合わせたレンダリングやスクリーニングの前に透明の分割・統合が行われるため、文字の太りなどが生じましたが、最終工程まで透明効果が維持されればこういった問題は解決します。最終的な解像度に合わせて文字や線が処理されるからです。
なお、PDF/X-4はPDFのバージョンとしてはPDF 6であり、Acrobat 7以降でないと扱えません。また、PDF/X-4はCS3以降のAdobe製品でサポートされており、これらをインストールするとPDF/X-4用のPDF書き出し設定が組み込まれます。ただし、この設定はDistillerでも表示されるものの、使うことはできないので注意が必要です。
透明効果を許容するPDF/X-4は、透明効果がサポートされていないPostScriptとは相容れません。そのため、PDF/X-4を書き出す際は、PostScriptを書き出してDistillerでPDFに変換するという方法は使えず、必ずアプリケーションから直接書き出さなければなりません。
PDF/X-4の可能性
PDF/X-4は、透明効果の出力に関する問題を解決する技術としてはかなり効果的と言えるでしょう。ただし、Adobe PDF Print Engineを搭載したRIPが必要であるという点は、新たな設備投資に及び腰な出力現場ですぐに受け入れられないかもしれません。
また、PDF/X-4を使うことで、PDF出力時の透明効果については解決できたとしても、他の問題がすべて解決できるというわけでもありません。初めに述べたようにPDF出力については問題が少なからずあり、現状では、トラブルのない出力を実現するためには各工程で作業する人間の手間と知識、さらには情報のやり取りが必要だということには変わりがないようです。
(田村 2008.5.7初出)
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