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紙と印刷の色

紙と印刷の色

紙の種類

言うまでもありませんが、印刷物は紙にインクを印刷して作ります。つまり印刷というのは紙がなければはじまらないわけです。紙は、単にインクを乗せる素材であるというだけでなく、印刷の品質を左右する重要な要素のひとつですが、それだけ重要な存在でありながら、印刷物を作る仕事をしていても紙のことをきちんと理解できていない人が少なくないようです。

紙が発明されたのは中国、今から二千年以上前のこととされています。発明したのは後漢の蔡倫という人だと長い間言われてきましたが、紀元前の前漢時代の遺跡から紙が出土するなど、紙の歴史は蔡倫よりもさらに遡ることが分かってきました。

現在、製紙メーカーによってさまざまな紙が作られていますが、印刷で使われるのは、印刷に適した性質を持つ印刷用紙と呼ばれる紙です。印刷用紙にも数多くの銘柄・種類がありますが、上質紙・中質紙などの非塗工紙、アート紙・コート紙などの塗工紙、微塗工紙、さらに色上質紙などの特殊印刷用紙に大きく分けられます。

塗工紙というのは紙の表面に塗料を塗ることで光沢や質感を向上させた紙で、塗料の量によってアート紙、コート紙、軽量コート紙というように分類されます。なお、微塗工紙は軽量コート紙よりもさらに少ない量の塗料を塗った紙です。

一方、上質紙や中質紙は塗料を塗っていない紙で、化学パルプの比率によって上質紙、中質紙、更紙などに分けられます。化学パルプ100%が上質紙、中質紙は70%の化学パルプに機械(砕木)パルプを加えたものです。ちなみにアート紙は上質紙に塗料を塗ったもの、また、コート紙は上質紙に塗料を塗った上質コート紙と中質紙に塗料を塗った中質コート紙があります。

紙の種類によって質感や光沢が違い、価格も異なりますが、印刷データを作る側から見た場合、それ以上に紙によって印刷の色も変わってくるという点が重要です。

紙の色

紙によって印刷の色が変わるという現象を考える場合、紙そのものの色の違いと紙によるインクの発色の違いの二つに注目する必要があります。

印刷用紙はほとんどが白い紙を使いますが、同じ白といっても色に違いがあります。ポスターや美術書などでは白色度の高い紙が使われますが、書籍用紙ではむしろやや黄色がかった色が好まれます。色再現を求めるものにはカラーの再現性が良い白色度が高い紙、長い文章を読む場合は目が疲れないように白すぎない紙を使うといったように、用途によって色の特性を使い分けているのです。

紙の白さは、塗料の違いだけでなく、パルプの配合によっても変わってきます。化学パルプ100%の上質紙やアート紙は中質紙や中質コート紙よりも白色度が高く、また、再生紙は漂白処理をしてもバージンパルプほど白くなりにくいのが普通です。

紙の色の違いは、インクを印刷した場合にも印刷の色に影響を与えます。人間の眼は、印刷物を見る際、印刷されたインクだけを見ることはできません。インクの乗っていない白地の部分も当然目に入るため、それがどういう白であるかによって、インクの色が与える印象は変わってくるのです。

紙の種類で異なる色

紙の色はインクの色も直接左右します。インクが色を表現する仕組みは、光が紙で反射し、さらにインクを透過して人の目に入り、視神経を刺激するというものです。紙の色が違うということは紙で反射される光の色(逆に言うと吸収される光の波長)が違うということであり、そのためインクが同じであっても色が変わってくるのです。

インクの色は、紙の色だけでなく、紙の表面の平滑度によっても違ってきます。光が紙で反射する際、平滑度の低い紙だとそれだけ紙中での乱反射が多くなり、それだけインクの網点がにじんで太く見えます(ドットゲイン)。網点が太ればそれだけ色の濃度が高くなるわけです。逆に、平滑度が高い紙はドットゲインが少なく、中間調の濃度が抑えられるだけでなく、鮮やかな色再現が可能になります。

紙そのものは同じであっても、上質紙のような非塗工紙よりもアート紙・コート紙などの塗工紙のほうが平滑度が高いため、それだけドットゲインが少なく、色の再現性が高くなるわけです。

紙に合わせた色の調整

紙によって印刷の色はかなり違ってきます。逆に言うと、印刷の色をきちんとコントロールするにはどういう紙に印刷するのかを把握しておくことが大切ということになります。DTPでデータを作る場合、通常はカラープリンタで出力して色を確認しますが、プリンタの出力用紙と実際の印刷用紙の性質の違いを考慮しておかないと、正確な色のコントロールはできません。

特に、最終的に色をチェックする色校正では紙の違いをどう考えるかが重要な問題になります。コンセンサスやファインチェッカーといったケミカルプルーファを使った簡易校正は、印刷用紙とは白色度もドットゲインも違います。印刷と同じ色再現を求めるのであれば、本番と同じ印刷機を使い、同じ用紙に印刷する本機校正がベストですが、それは費用などの面で無理だとしても印刷と同じ紙を使う本紙校正であれば色の信頼性はかなり高くなります。

デジタルプルーファ(DDCP)の中には、印刷用紙を使うタイプもありますが、全ての種類の印刷用紙に対応しているというわけではないようです。もちろん、一般的なケミカルプルーフは紙が違うので、そのままでは色の信頼性は望めません。

そういった場合、カラーマネージメントの技術を使うことで印刷の色を高い精度で再現することが可能になります。色の違いを数値で把握し、データに対して違いを吸収するような補正を掛けて出力・印刷するわけです。

ただし、カラーマネージメントを使っても完璧に印刷用紙をシミュレートできるわけではありません。紙の地色を同じにするのは難しい(近づけることは可能)ですし、質感の違いなどはどうやっても解消できません。

こういった限界はあるにしろ、紙の種類による色の違いをできるだけ抑えるにはカラーマネージメントは有効であり、現状ではもっともメリットのある手段であることは間違いないでしょう。

(田村 2008.8.4初出)

(田村 2016.11.26更新)

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