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画像フォーマットとしてのPDF

画像フォーマットとしてのPDF

PDF画像の実力

これまで、DTPで使われる画像のフォーマットはEPSが主流でした。EPSはPostScriptをベースにしたファイル形式で、ビットマップ画像やドローデータのほか、ページデータもEPSとして保存することができるなど汎用性が高く、1990年代のDTPではページデータに貼り込まれたリンクファイルのほとんどがEPSデータでした。AIやPSDといったAdobeアプリケーションのネイティブ形式が普及してきた現在でも、既存データを中心に重要性は失われていません。

ただ、最近のAdobeのセミナーなどを見ると、EPS画像の代わりにPDFを使うことが多く、PDFの利用を推奨しているようにも思われます。文書フォーマットというイメージが強いPDFですが、EPSに代わって画像形式として利用されていく時代がやってくるのでしょうか。また、PDFを使うメリットはどこにあるのでしょうか。今回は画像フォーマットとしてのPDFの可能性を考えてみます。

まず、PDFの画像フォーマットとしての実力について見ていきましょう。PDFは、CMYKやグレースケール、特色などに対応しており、クリッピングパスも保存できるなど、画像としての基本的な機能に不足はありません。レイヤー(ベクトルレイヤー)やアルファチャンネル、16bit、ICCプロファイルといった機能もサポートしており、新しい機能への対応が十分ではない古いフォーマットであるEPSよりも使い勝手がよいと言えないこともありません。

圧縮が利くという点もPDFの特徴の一つです。PDFは、JPEGやZIP圧縮、さらに最新バージョンではJPEG2000にも対応しています。DTPで使う場合、データの劣化を伴う圧縮は慎重でなければなりませんが、ZIPやJPEG2000などのロスレス(劣化しない)圧縮をサポートしている点は重要なポイントです(ただし出力を考えると最終的な保存は注意が必要になる)。

次に、DTPアプリケーションのサポートという点を考えてみると、InDesign(インデザイン)やIllustrator、Photoshopなど最新のAdobe製品はもちろんPDFをサポートしています。PDFはプレビューがきれいというのがEPSに対してのアドバンテージになりますが、InDesignだとEPSでもきれいなプレビューを表示することが可能なので、それほどのメリットにはならないかもしれません。

出力に関して考えた場合、最近のRIPであればそれほど問題なく出力できるようですが、古いRIPなど環境によってはトラブルが起きる可能性もないとは言えません。特にPDFを貼り込んだデータをさらにPDFで保存して出力するといったケースは注意したほうがいいようです。

なお、PDFの場合、バージョンが問題になります。古いバージョンしかサポートされていない環境で新しいバージョンを使うと、トラブルが起きる可能性は否定できません。具体的には、透明効果(PDF 1.4以上)やレイヤー(PDF 1.5以上)、最大31チャンネルまでのDeviceNカラースペース(PDF 1.5以上)、JPEG2000(PDF 1.5以上)などです。

出力の安全性を考えると、PDFに保存する場合はあまり新しいバージョンではなく、PDF 1.3やPDF 1.4のほうがいいかもしれません。

画像フォーマットとしての機能だけを考えた場合、PDFは基本的な機能を備え、他の画像形式にない特徴もあるなど、優れた面は見られるものの、トラブルになる要因もあり、EPSやPSD、TIFFを駆逐してまで使われるほど大きなアドバンテージがあるとは言えないようです。

PDFのメリット

では、PDFを画像フォーマットとしてDTPで使うメリットはどこにあるのでしょうか。

PDFの最大の特徴は、環境を問わず使えるという点にあります。PDFのビューワであるAdobe Reader(Acrobat Reader)は、各プラットフォーム版(WindowsやMacintosh、UNIXだけでなくモバイル用もある)が無償で配布されています。パソコンを購入した時点ですでに入っていたということもよくあり、世界で最も普及しているソフトの一つです。

EPSやPSD画像だと、クライアントに画像を渡すような場合に、クライアントの環境に合わせてJPEGなどに保存し直したりしなければなりませんが、PDFであればその必要はありません。Adobe Readerさえインストールされていれば、CMYK画像であっても、クライアントのモニタで問題なく色を確認し、プリンタで出力できるのです。

また、デジタルデータは簡単にコピーできるため、作成者の知らないうちにインターネットなどで流通されてしまうといった危険が付いて回りますが、PDFであれば、閲覧や印刷を制限したり、勝手に加工されたりしないようにセキュリティを掛けることも容易です。さらに、PDFには内部にメタ情報を格納するスペースがあり、そこに作成者の情報などを保管することもできます。

今後、デジタルデータの著作権をめぐる問題はますます大きくなっていくことが予想されます。これまで、DTPでは、誰が作ったデータなのか、誰が管理するのかということがあいまいなまま進んできました。最終的に紙に印刷してはじめて価値がある、ということであればそれでも良かったかもしれません。

しかし、データの多目的利用が進んでいけば、印刷業界でもデータをいかに管理するかがクローズアップされてくるのは間違いありません。そう考えると、画像フォーマットとしてPDFを使うメリットもはっきりしてくるのではないでしょうか。

PDFを画像フォーマットとして使う意義は今のところまだほとんどないというのが現状ですが、印刷業界の将来のあり方を見直すためにも、PDFの活用について対応を考えておく意味はあるでしょう。

(田村 2006/12/18初出)

(田村 2016/11/1更新)

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