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画像解像度のリサンプル

画像解像度のリサンプル

適正な画像解像度

DTPが普及したことで大きく変わったのが写真画像の扱いです。それまでは版下で写真のアタリだけとっておき、最後にフィルムの処理で合成するといった作業が必要でしたが、レイアウトソフトで画像を簡単に貼り込めるようになったことで、マニュアルの製版処理はほとんど不要になりました。

そこで問題になってきたのが画像の解像度です。デジタル画像においては、画像解像度がその品質を左右する重要な要素であり、印刷で適切な解像度とは何かという点がDTPにおける画像処理のポイントになりました。

一般に、印刷物で適切な解像度は印刷線数の2倍が目安とされています。150線だと300ppi、175線であれば350ppiというわけです。ただし、それより少しでも低ければ品質が目立って悪化するということではなく、著しく低い解像度でなければそれほど気にしなくても構わないというケースも多いはずです。

画像のリサンプル

ところで、従来のDTPワークフローでは、画像の解像度は最終的にレイアウトが確定した段階で調整するということになっていました。レイアウトを自由に変更できるというのはDTPのメリットの一つですから、いったんレイアウトを組んだ後でもレイアウト変更は少なくありません。そのため、レイアウトが確定しないと画像の大きさも決まらないのです。

その場合、写真原稿を低解像度でスキャニングし、それをアタリ画像としてレイアウトデータに貼り込み、最終的に本画像に差し替えるという方法が一般に行われていました。

画像のサイズは情報パレットなどで把握できるので、必要なピクセル数は計算すれば簡単に算出できます。ただし、画像の数が多いと差し替えるだけでもかなりの時間がかかります。そもそもスキャニングを低解像度と高解像度の2回行わなければならないというのも、やむを得ないとはいえ面倒です。

そこで、はじめから大きめのサイズで画像をスキャニングして貼り込み、最終的にPhotoshopで適切な解像度にリサンプル(画像のピクセル数を変更することを「リサンプル」という。「リサイズ」と呼ぶ人もいるが、ピクセル数は変えずに解像度を変更する処理もリサイズというので区別するほうが望ましい)するという方法も行われていました(この場合、画像サイズではなく、拡大縮小率を元にピクセル数を調整することになる)。リサンプルした画像を上書き保存すれば、ファイル名は同じなのでリンクを更新するだけで差し替えられます。

このやり方であれば、スキャニングを2回するよりも効率的に作業できます。ただし、大きめの画像を貼り込むため、リサンプルする前はデータが重く、非力なマシンだと作業が大変でした。

画像のリサンプルは必要か

デジタルカメラが普及し、写真は初めからデジタルデータになっているのが当たり前になると、従来のワークフローにも変化が現われます。低解像度のアタリ画像を使うやり方はあまり見られなくなり、はじめから高解像度の画像をレイアウトデータに貼り込むというのが一般的になってきました。

その場合、最終的にレイアウトが確定し、画像のサイズが決まった段階であらためて画像データをリサンプルし、350ppiの解像度に統一するということもありますが、最近はむしろ画像が低すぎるのでなければ解像度はそのまま使うことが多くなっているようです。

たとえば、3000×2000ピクセル(600万画素)のデータを76.2×50.8mm(3×2インチ)のサイズで使いたい場合、そのまま貼り込むと1000ppiの解像度になります。この画像をPhotoshopで350ppiに解像度変更すると1050×700ピクセルにリサンプルされます。

リサンプルしなければ、画像のファイル容量は350ppiリサンプル時の8倍以上になってしまいますが、最近のマシン性能を考えると、多少のストレスがあるくらいで、大きなトラブルが起きるというほどではありません。むしろ、リサンプルする手間が省けるというメリットのほうが大きいという考え方もあり得るわけです。

以前であれば、作業マシンの性能だけでなく、RIPのマシン性能もそれほど高くなかったため、あまり高い解像度の画像を数多く貼り付けていると、出力に時間がかかる、あるいはデータがきちんと出力できないというトラブルもありましたが、最近は出力環境も大きく改善されており、それほど大きな障害にはなりません(もっとも、昔から制作側は出力側に配慮してデータを作っていたというわけではありませんでしたが)。

画像の解像度が低い場合は印刷時の品質に問題が生じますが、いくら高くても画質には影響ありません。そう考えると、解像度が高すぎる画像であっても、わざわざ手間をかけてリサンプルする必要はないのではないかというのも分からなくはありません。

ただし、解像度を適切な値にするというのは単にデータ量を軽くするという以外にも重要な意味があるのです。

写真画像を印刷する場合、そのまま網点化するとボケた印象の画像になってしまいます。それを避けるために、写真中の輪郭部分を強調するシャープネス処理が施されます。

このシャープネス処理(アンシャープマスク)では、強調する輪郭の幅(半径)、量、しきい値が重要なポイントになります。ところが、輪郭の幅を指定しようとしても、解像度が決まっていなければどれだけの幅に処理をすればいいのか分からないのです。

たとえば、350ppiの解像度の画像に1ピクセル幅でアンシャープマスク処理を施したとします。この場合の1ピクセル幅は約0.073mmに相当する値です。ところが、画像の解像度が1000ppiだった場合、1ピクセル幅は約0.025mmになってしまうのです(アンシャープマスクで1ピクセルを指定すると、輪郭をはさんで1ピクセルずつくらいの範囲が強調処理される)。

175線の印刷で、網点の間隔は約0.145mmになります。それに対して0.025mm程度の幅でシャープネス処理をしても十分な効果は得られないでしょう。アンシャープマスクの幅は、適切な値でなければシャープネスの効果が上がらなかったり、逆に強調しすぎてしまうといった問題が起きるのです。

そう考えると、画像の解像度は適切な値でなければならない、また、画像解像度が適正に処理された後でシャープネス処理を行う必要がある、といった原則は今後もできるだけ守っていくべきではないでしょうか。

(田村 2009.7.27初出)

(田村 2016.5.31更新)

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