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あらためてスタイル機能を考える

あらためてスタイル機能を考える

スタイル機能のメリット

DTPレイアウトソフトの特徴の一つに「スタイル」機能の存在があります(もっとも、スタイル機能をもつソフトはWordなど他にもありますが)。スタイル機能は、書体や行送りなど組版の要素をまとめたもので、テキストに適切なスタイルを適用するだけで即座に思い通りの組版処理が行えるという便利な機能です。

文章がすべて同じ組版処理で済むようなテキストであればスタイルは必要ありませんが、本文、見出し、小見出しなど、さまざまな指定が混在する文章の場合、スタイルを使うことで組版作業の効率は大幅にアップします。

また、作業を分担して行うような場合も、同じスタイルを使うことで作業の統一性を確保することができます。スタイルの定義は保存することができるので、スタイル定義を行ったドキュメントファイルをテンプレートとして使えば、簡単にスタイルを統一することができます。

さらに、他のドキュメントからスタイルを読み込むことができるInDesignのようなソフトを使えば、必要なスタイルだけを使いまわすということも可能です。

段落スタイルと文字スタイル

そもそも、スタイル機能は段落単位で書式を適用するために考えられたものです。書式は段落単位で変わることが多く、個別の文字列で属性が違う場合は段落にスタイルを適用した後でその文字列の書式を変更するというやり方でも十分に効率的だからです。

ところが、QuarkXPressでバージョン4.0から文字スタイルの機能が搭載され、InDesignでも段落スタイルと文字スタイル機能が使えるなど、段落スタイルと文字スタイルの併用がDTPでも行われるようになってきました。段落全体の属性とは別に、キーワードなど特定の属性の文字列が文中で繰り返し出てくるような場合、文字スタイルとして定義しておけば、文字列の選択→文字スタイルのクリックだけで属性を適用できるので効率的なのです。

文字スタイルが使われるようになると、段落スタイルと文字スタイルが重複して指定され、しかもそれが矛盾するケースも出てきます。InDesignの場合、段落スタイルが適用されている段落で文字スタイルを指定した場合、文字スタイルの属性が優先されます。

同様に、段落スタイルと文字スタイルが適用されているテキストで、段落スタイルを変更した場合、文字スタイルで指定した属性はそのまま残り、それ以外の属性が段落スタイルに応じて変更されることになります。

なお、ドローソフトであるIllustratorも、レイアウトソフトでないにもかかわらず日本ではレイアウトするソフトとして一般的に使われてきました。レイアウトソフトでないIllustratorはスタイル機能を持たないというのがデメリットでしたが、CS以降で段落スタイル、文字スタイルともにサポートしたことにより、レイアウトソフトのような効率的なレイアウト作業がある程度可能になりました。

スタイルの使い方を考える

ここで、スタイル機能と組版作業の関係についてあらためて整理してみましょう。スタイル機能は確かに便利な機能ですが、使うと効率的だというだけで、必ず使わなければならないというものではありません。スタイル機能を使うには、前もってスタイルを設定しておかなければなりませんが、一度しか使わないスタイルだと、スタイルを設定するだけ手間が余計に掛かるということだってあるわけです。

たとえば、書式を色々変更しながらデザインを調整していくといった作業の場合は、スタイルは使わないほうが効率的かもしれません。デザインツールであるIllustratorにこれまでスタイル機能が搭載されなかったのも、おそらくこういった理由からでしょう。

Illustratorで作業するのに慣れたオペレーターの中には、InDesignの組版作業でもスタイルを使いたがらない人もいるようです。また、スタイルを使うにしても、異なる属性があるたびにスタイルを作るのを面倒がって、書体やサイズだけをスタイルの設定で変更せず属性を個別に変更するといったこともよく見られます。

ただし、スタイルの役割は、ただ属性の指定を効率的に行うということだけではありません。スタイルを適用するということは、テキストをスタイルによって分類するということでもあります。

スタイルで分類化されたテキストは、スタイルを変更することで全体の変更を簡単に行うことが可能です。たとえば、段落ごとに属性を段落パレットで指定していると、複数段落の属性を変更する時に変更し忘れたり変更し間違えたりする可能性があります。同じスタイルで分類されているテキストをすべて同じように変更するのであれば、スタイルの設定を変更するほうが効率的であるばかりでなく、はるかにミスが起きにくいのです。

そう考えると、同じ属性の部分が繰り返し出てくる場合は、できるだけスタイルを使って指定するべきでしょう。

また、段落スタイルと文字スタイルの使い分けがうまくなされていないケースも見受けられます。文字スタイルは、部分的な文字列を指定する際に使うものであり、段落の指定には段落スタイルを使うべきです。ところが、段落の属性を変更するのに文字スタイルが使われることもあります。

これはおそらく、段落スタイルを新たに作るのが面倒なので、書体やサイズだけを指定した文字スタイルを使って部分的な変更で使おうということだと思われます。確かに、文字スタイルにはそういった活用法もあるでしょう。しかし、文字スタイルを使うことで、段落スタイルによる分類が複雑になるという側面も忘れてはなりません。

たとえば、段落スタイルを修正して属性を変更しようとした場合、文字スタイルが適用されている部分については、文字スタイルで指定されていない属性は変更され、文字スタイルで指定した属性は変更されません。同じ段落スタイルが適用されていても、スタイルの修正による結果が異なるのです。

段落スタイルと文字スタイルが二重に適用されることで、スタイルによる管理が複雑になり、気をつけないと思わぬところが変更されてしまうというトラブルが起きかねないわけです。

スタイルは便利な機能であり、属性の管理を効率的かつ安全に行う上でも活用したい機能ですが、使う場合にはその特性や役割を十分考えて適切に使いたいものです。

(田村 2008.6.16初出)

(田村 2016.5.31更新)

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