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2色印刷の色表現

2色印刷の色表現

特色の指定

印刷費はあまり多く出せないがモノクロでは物足りない、といった場合によく使われるのが2色印刷です。2色のデータは色数が少ない分だけ4色フルカラーよりも手軽に作れるだろうと考える人もいますが、実際には2色印刷ならではのルールや決まりごとがあり、よく理解していないと思わぬ失敗をしてしまうこともあります。

2色印刷の場合、特色を使うのが一般的です。もちろん、4色印刷で使うCMYKのプロセスインクから2色を選んで使ってもかまいませんが、普通はプロセスインクを使うにしても黒インクくらいで、少なくとも1色は特色にするというのがほとんどです。

2色印刷だと、4色フルカラーの表現力を別の要素で補わなければなりません。特色には、プロセスインクで出せないインパクトを表現できるというメリットがあり、これが2色印刷で特色が使われる最大の理由でしょう。通常のカラー印刷で出せない彩度の高い色や蛍光色も特色であれば再現できます。また、小さい文字や罫線にCMYKカラー印刷で掛け合わせの色を指定すると網点になるため品質に問題が出たり版ずれが生じたりしますが、特色100%で指定すればそういったトラブルもありません。

ところで、DTP工程では、直接特色を指定するのではなく、シアンやマゼンタといったプロセスカラーを特色の代用としてデータを作るやり方が広く行われています。たとえば、DIC 158とDIC 184の2色で印刷するのであれば、DIC 158の代わりにマゼンタ、DIC 184の代わりにシアンを使ってデータを作るわけです。その上で、最終的な印刷では本来の特色インクを使って印刷することになります。

シアンやマゼンタなどのプロセスカラーでデータを作っても、特色で作っても、印刷前に出力される刷版に本質的な違いはありません(スクリーン角度などは別として)。出力された刷版は同じで、実際の印刷時に特色インクを使えば特色印刷になるわけです。ただし、制作段階でプロセスカラーを指定するやり方だと、データを作る段階で色を確認できないというデメリットがあります。

DTPソフトであれば特色も直接指定できるのが今や当たり前です。実際、InDesignもIllustratorもDICやPANTONE、TOYOなど、主要な特色インクのデータを用意しています。モニタやカンプでの色の確認も簡単にできるのに、わざわざ色を確認できない代用色を使うのは、作業のやりやすさに理由があります。

通常のCMYKカラーと違い、特色の場合は掛け合わせができないため基本的に単色でしか色の指定ができません。それに対してデータをプロセスカラーで代用しておけば、特色の掛け合わせも通常通り自由にできるのです。また、制作段階ではどの特色を使うかまだ確定していないこともよくありますが、そういった場合も代用色で作業を進めることができます。

また、特色を使って作成した図版をInDesignに貼り込み、InDesign上でも平アミのオブジェクトに特色を指定するなど、複数のアプリケーションを組み合わせて2色印刷用データを作る場合、アプリケーション間で特色の名前が少しでも違うと2色のデータのはずなのに3色で出力されてしまうといったことが起きかねないので注意が必要です。もちろん代用カラーであればこういった問題は起きません。

なお、InDesignでは「混合インキスウォッチ」を使えば特色の掛け合わせは可能です。やり方は、スウォッチパネルでまず特色を登録し、さらにその特色を指定し掛け合わせの色として混合インキスウォッチまたは混合インキグループを作るというもので、登録してしまえば普通のスウォッチと同様に使えます。それでも特色をスウォッチに登録し、掛け合わせのスウォッチをいちいち作らなければならないなど、通常と異なる面倒な手間が必要です。

特色の選び方

シアン、マゼンタ、イエローの3色は言うまでもなく色の3原色です。この3色を混ぜ合わせれば(ほぼ)すべての色を再現できるというのが色の“3原色”たる所以です。逆に言えば、2色印刷でフルカラーの再現は無理ということになります。

ただし、特色同士を掛け合わせることである程度の色のバリエーションを作ることは可能です。その際、どういった特色を選ぶかによって再現できる色の範囲も変わってきます。

同系統の色同士を掛け合わせた場合、その系統の範囲内であればかなり微妙な色まで再現できますが、異なる色相の色は表せません。できるだけ色相の異なる色同士を掛け合わせるほうが、表現できる色の範囲は広がります。特に、赤と青緑など、マンセル色相環で反対の位置になる補色同士を掛け合わせれば、さまざまな色が表現できるだけでなく、黒に近い色を表現することも可能です。

もちろん、黒インク+特色といった、掛け合わせによる色数の拡大をあまり考えない2色印刷もありますが、2色でなるべく色のバリエーションを追求したいのであれば、補色をうまく利用するのはかなり有効な手段でしょう。

なお、特色は印刷時に変動のない安定した色が出せるということで、ロゴマークなどで活用されてきましたが、それはカラーチップが用意された100%ベタで使う場合の話であり、中間調や2色掛け合わせになると、モニタやプリンタ出力の色はあてになりません。デジタルデータを使って掛け合わせのシミュレーションをするといっても、実際の色とはかなり違っていたりして、結局のところ刷ってみないと正確な色は分からないのです。特に、特色インクはプロセスインクより不透明度が高く、同じ掛け合わせでも印刷時の刷り順を逆にしただけで色が違ってくるなど、注意が必要です。

DICカラーガイドなどを販売しているジーイー企画センターが、刷り順も反映した特色2色の掛け合わせカラーチップや色見本を掲載した書籍を出しているので、参考にするといいでしょう。

ダブルトーンと2色分解

2色印刷では画像はメインの1色だけを指定することが多いようです。確かにそのほうが手間が掛からなくて楽ですが、うまく工夫すれば2色の特色掛け合わせで“色”を感じさせることも可能です。

画像を2色で表現する場合、ダブルトーンと2色分解という2通りのやり方があります。ダブルトーンは、本来グレースケールの画像を2色のインクで印刷するというものです。この場合、色の範囲は広がりませんが、256階調しかないグレースケールも2色インクで印刷することでより豊富な階調を表現することができます。

ダブルトーンを作るには、PhotoshopでモードをRGB/CMYK→グレースケール→ダブルトーンと変換しインクを2色選びます。その際、2色のうち1色のトーンカーブを調整して階調を豊富に見せたい部分のコントラストを強調するとよいでしょう。

2色に分解する場合はちょっと工夫が必要です。まず、Photoshopのカラー設定で作業用スペースのCMYKに「カスタムCMYK」を選び、現われたダイアログで「墨版生成」を「なし」にします。こうしておけば、RGB画像をCMYKに分解する時に、4色ではなくCMYの3色に分解されることになります。

CMYK分解後、チャンネルミキサーでイエローの要素を適宜他の2色に振り分け、イエローの要素を0にすれば2色分解になるので、トーンカーブなどで濃度の調整を行って完成です。特色の選択や絵柄にもよりますが、うまくすれば一見フルカラーと見まごうような効果をあげることもできるでしょう。

なお、代用色でなく特色で指定する場合は、以上の処理の後、チャンネルパレットでシアンとマゼンタのデータをスポットカラーのチャンネルにカット&ペーストします。このデータをそのままPSDで保存するか、マルチカラーに変換してCMYKのチャンネルを削除、DCS 2.0形式で保存します。

画像を特色の掛け合わせで印刷する場合、チャンネルミキサーやトーンカーブなどの調整は勘で行うことになり、試行錯誤は必須です。画面やプリンタ出力で確認しながら色の調整をしていきますが、想定した色と実際に印刷される色である程度ズレが生じるのは覚悟する必要があります。

2色印刷は奥が深く、経験と勘がものをいう世界ですが、うまくはまればかなりの効果が期待できるだけに、いろいろと試してみる価値はあるのではないでしょうか。

(田村 2006.4.10初出)

(田村 2023.7.3更新)

 

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