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文字サイズの単位

文字サイズの単位

DTPソフトで文字を扱ったことがあれば、文字のサイズはポイントか級数で指定したはずです。最近のDTPソフトは、ポイントでも級数でも指定することができますが、仕事によってはポイントを級数に換算するなどの作業も必要になってきます。

また、どちらも使えると言っても、正確には換算の誤差が生じることがあり、問題が起きないとは限りません。

DTPで欠かせない二大単位「ポイント」と「級」。今回は、意外に知られていないその歴史や問題点についてまとめてみましょう。

写植から始まった級数

昔は級数が使えないDTPソフトもありましたが、日本の印刷産業でDTP化率が高くなってくると、級数のサポートも当たり前になってきました。この級数という単位は数十年の歴史があります。

日本の印刷独自の単位である級数は、写植で作られたものです。日本で最初に写植システムを開発した写研は、0.25ミリ、すなわち1ミリの四分の一を文字サイズの最小単位と定めました。四分の一を英語で「Quarter」と言うことから、略して「Q」を文字サイズの単位としたのです。級数の「級」はQの当て字です。

一方、当初の手動写植機は、文字の送りを歯車で行っていました。この歯車の歯の間隔がやはり0.25ミリで、歯を1つ分動かせば0.25ミリ送られます。そこで、文字の送りの単位に「歯」が使われることになりました。「級」と「歯」は、どちらも0.25ミリが基準ですが、その由来の違いによって現在でもなお使い分けがなされています。

ちなみに、写植が普及する前は活版印刷が一般的でしたが、日本の活版印刷では、その黎明期から文字サイズに「号」という単位が使われています。号とは活字のサイズを表す単位で、「初号」~「八号」の九種類がありました。また、明治中期以降は欧米で使われていたポイントも使われるようになりました。

 さまざまなポイント

欧米では、文字サイズの単位にポイントが使われてきました。ポイントが生まれたのは今から三百年近くも昔の18世紀のことです。

グーテンベルクの活版印刷以来、欧米では、シセロやパイカといった数多くの活字が作られてきましたが、これらの活字のサイズを表す場合、シセロやパイカなどの名称がそのまま使われました。要するに、活字セットの名前そのものが大きさも表していたわけです。

ただしこの場合、同じシセロという名前であっても、地域や都市あるいは鋳造所によって実際のサイズがバラバラで、もし同じ活字として使おうとするとトラブルが生じるといったこともありました。

この問題を解決するためにフランスのフルニエが考えたのは、既存の基準寸法を元に標準の単位を作り、それを使ってサイズ指定を行うという方法でした。フルニエは、シセロの12分の1を1ポイント(point:フランス語読みはポワン)としました。このフルニエ・ポイントでは1point≒0.34882mmとなります。

さらに、1784年には、やはりフランスのディドーが、基準の単位にインチ(フランスではpouce)を採用し、1point=1/72インチとなるディドー・ポイントを考案します。当時のフランス王国で定められていた1pouceは現在英米で使われている1インチよりも大きく、そのため、ディドー・ポイントでは1point≒0.37597mmになります。

ちなみにこの数年後にフランス革命が勃発し、メートル法が制定されています。ひょっとしたら我々は数年の差で“メートル法に則したポイント”というものを逃してしまったのかもしれませんね。

ディドー・ポイントは、ヨーロッパで広く採用され、つい最近まで一般に使われていました。なお、ディドー・ポイントは、1973年になって1point=3/8mm=0.375mmと定義し直されています。

一方、アメリカでポイントが制定されたのはヨーロッパよりはるかに遅い1886年のこと。当時合衆国で最大手の活字鋳造所MS&Jのジョンソン・パイカ活字を標準にし、その12分の1を1ポイントとしたのです。これがアメリカン・ポイントと呼ばれるものです。

ディドー・ポイントと異なり、ジョンソン・パイカはインチに基づいて作られたものではない(正確には83パイカ=35cmという変則的なもの)ため、アメリカン・ポイントでは、1point≒0.3514mmとなっています。

アメリカン・ポイントが作られたのは明治19年ですが、明治30年代には日本にも導入され、普及しました。つまり、日本の印刷で使われてきたポイントは、1point≒0.3514mm(35÷83÷12=1point)というものだったのです。

換算誤差に注意

ここまで、ポイントにはフルニエ・ポイント、ディドー・ポイント、アメリカン・ポイントの三つがあることを紹介しました。ところが、DTPソフトなどコンピュータ・システムの多くで採用されているポイントは、どの伝統的なポイントとも異なるものです。この新しいポイントはDTPポイントとも呼ばれますが、英米の現行の1インチを基準にするもので、1point=1/72インチすなわち約0.3528mmとなっています。

同じ名称でありながら、実際の寸法は異なる複数のポイントが存在するわけで、ポイントが指定されている場合には注意しなければなりません。もっとも、特別なケースでもなければ、今どきDTPで以前のポイントにお目にかかることはほとんどないかもしれません。

むしろ問題になるのは、ポイントと級数の違いでしょう。ポイントはインチ体系、級はメートル法に基づく単位と、基準が違うため、完全に正確な換算はできません。換算時にはソフトが小数点以下何桁までを計算するかが問題になり、結果もソフトによって異なってくる可能性があります。

(田村 2006.4.24初出)

(田村 2016.5.25更新)

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