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文字について OpenTypeフォントの特徴と使い方
OpenTypeフォントのメリットとは?

DTPの世界にOpenTypeフォントが登場して数年が経ちました。新しい環境への移行に極めて慎重なDTP業界において、新しいフォントが普及するにはかなり時間が必要だというのはCIDフォントのケースを思い起こしても明らかですが、OpenTypeフォントの場合、プラットフォームの変更とも密接に関係しているだけに、事態はさらに複雑です。

Mac OS XやInDesign(インデザイン)に完全に移行してしまったユーザーだとOpenTypeの使用率もかなり高くなりますが、Mac OS 8/9やQuarkXPress 3.3/4.xなど旧来のシステムに頼らざるを得ない現場ではOpenTypeへの移行は依然として進んでいないというのが現状でしょう。ただ、旧来のシステム自体いつまで使えるか分からないという状況では、OpenTypeは当分使わないから関係ない、などと安閑としてもいられないはずです。

環境の対応度はひとまず措いて、OpenTypeフォントのメリットをあらためて考えてみましょう。Adobeやフォントメーカーはさまざまなメリットを声高に叫びますが、本当にOpenTypeフォントにはメリットがあるのでしょうか。

OpenTypeフォントのメリットとしてよく挙げられるのが「文字数の多さ(異体字)」「組版機能」「クロスプラットフォーム」などです。このうち、クロスプラットフォームはWindowsとMacintoshの環境でデータをお互いにやり取りするケースでのみメリットとなるものであり、誰にでも当てはまるものではないのでここでは一応除外します。

また、イタリックや上付き・下付きなどの指定をフォント内蔵の機能を使って行うという組版機能について考えてみると、確かに、この機能があれば便利なこともあるでしょう。ただし、通常は、こういった機能は使わないという仕事のほうが多いようにも思います。

結局、OpenTypeフォントのメリットといっても、普通の仕事で実感するメリットというのは文字数の多さくらいなのかもしれません。逆に言うと、文字数の多さをいかに活用できるかがOpenTypeフォントのメリットを享受できるかどうかのカギになるわけです。

GSUBテーブルの役割

OpenTypeフォントを使うと、異体字の変換や合字などいろいろな処理が可能ですが、これはOpenTypeフォントの機能や特性を記述したOTL(OpenType Layout)テーブルという格納部分に含まれている「GSUBテーブル」を利用することで実現されています。GSUBとはGlyph Substitution(字形置き換え)の意味で、異体字変換、縦横用文字やルビ文字の切り替えなど、文字の置換を指定するためのものです。

GSUBにはさらに細かな特性(Feature)を指定するテーブルがあり、ここでタグを使ったさまざまな指定ができます。たとえば、ユニコード番号が同じ2つの文字(字形)があるとして、1つには「jp78」、もう一つには「jp83」というタグが付けられているとします。アプリケーションがこれらのタグに対応していれば、jp78の文字からjp83の文字への置換を自動的に行うことも可能なのです。

InDesignの字形パレットを使うと、GSUBテーブルで付加されたタグの一端を確認することが出来ます。字形パレットで「選択された文字の異体字を表示」し、ポインタを異体字一覧の中の文字に置くと、その文字のCID(GID)、ユニコード、Shift JISの各番号がポップアップで表示されますが、GSUBテーブルのタグが付加されている文字にはそのタグも表示されます。

たとえば「辺」という文字を選択して字形パレットで異体字を表示させると小塚Proフォントで23文字もの異体字が現れます。一つずつポインタを当ててみると、ポップアップ表示の一番下のところに「JIS78字形(jp78)」とか「全ての異体字,5(aalt)」といった表示がある文字があります。これは、それぞれの文字にこういったタグが指定されているということなのです。

同じグループの異体字には必ずタグやタグの番号が与えられています。たとえば「aalt」というタグは異体字全般を意味しており、通し番号によって同じグループの異体字を管理しています(異体字をInDesignタグ付きテキストに書き出すと「aalt\,6」といったように指定される)。これによって異体字を正確に特定できるようになっているわけです。

OpenTypeフォントの文字(字形)には、aaltやjp78、jp83以外にもtrad(旧字体)やexpt(エキスパート字形)といった字形に関するタグが付けられています。これらのタグを指定すれば字形パレットでグループごとに一覧表示することができます。さらに、字形パレットのメニューやスタイルで字形タグを指定すれば、テキスト全体を旧字体やJIS78字形など特定の字形へ一気に変換するといった処理も可能です(ただしJIS78字形といっても完全にJIS78に準拠しているとは限らない)。

高まる字形指定の重要性

これまで、OpenTypeフォントの字形変換は、クライアントから特定の異体字を指定されるなどの必要に迫られた場合に限って利用されることが多かったのではないでしょうか。あくまでも例外的な処理というのが一般的な捉え方だったように思います。

しかし、まもなく字形変換の機能に大きな注目が集まるはずです。あと数ヶ月でリリースされる新OS「Windows Vista」の搭載フォントでは、表外漢字に印刷標準字形を採用した改正JIS X 0213に従い、百数十文字の字形が変更されることになっています。フォントの字形そのものが変更されるので、DTPレベルでどうこうできる問題ではありませんが、DTP現場ではできるだけトラブルのないように対策を考えなければなりません。

たとえば、元の原稿テキストがXPで入力されたものであれば、入力者は従来の字形のつもりで入力したとみなすことができます。また、Vistaで入力したテキストは、入力者が改正JIS X 0213準拠の字形であることを確認しながら入力したと考えられるでしょう。DTP現場でテキストを支給された場合、原則として入力者の想定した字形でデータを作るべきということになります(実際にはクライアントの意向を改めてきちんと確認しなければならなくなるはず)。

InDesignにテキストを取り込んだ場合、OpenTypeフォントを始めとする現行のフォントは、そのままだとすべて従来の字形になってしまいますから、改正JIS X 0213準拠の字形を使いたい場合は字形パレットで字形を変更しなければなりません。

字形パレットのメニューで一括変換できれば便利ですが、パレットメニューにある字形セットでは改正JIS X 0213を全てカバーすることはできません。結局今のところ一つずつ字形を変換していくしかないようです。ただし、トラブル防止や効率向上を考えると、字形を簡単にチェックするプログラムなどを用意するといった対策を今のうちに考えておいたほうがよいかもしれません。

(田村 2006.8.28初出)

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